ロバート・フリッツの動画「構造思考の基礎」の翻訳です。構造思考を始めるための、はじめのステップを簡単に解説しています。
構造思考のステップ2:
話されていることを絵にすることだ。
このビジュアル言語を教える理由は、立体的に考えてもらうためだ。構造的に、関係性について考えることだ。線形(Linear)な言語では、これができない。それほどたくさんのアイデアを同時にホールドすることができないんだ。ナンシー・ベルと言う女性がアメリカにいる。彼女の会社は、例えばディスレクシアのような学習障害を持った子どもたちに、どうやって絵で考えるかを教えている。個別の単語から始めて、文やパラグラフ、もっと長い言葉を子どもたちは絵にしていく。
彼女が指摘しているのはこういうことだ。子どもたちが言葉を絵に翻訳し始めると、理解度は上昇する。劇的にね。言葉を使うときMRIで脳のスキャンを撮ると、学習障害を持った子どもたちの視覚中枢は、いわゆる普通の子どもと比較すると活動が活発じゃないんだ。しかし、この方法を試してみると、子どもたちの視覚中枢が一気に開放される。
つまり、このステップ2でやっていることは、みなさんの視覚リテラシーがどのレベルからスタートするかは分からないが、それを向上させるお手伝いだ。あなたの脳の視覚中枢を開放することだ。これができるようになると、何かを観察するときに、関係性がどうなっているのかをもっとよく理解できる。これは、モデルじゃない。私たちは、診断型のモデルは教えない。教えるのは、ものの見方と、そこに実際あるものを理解する方法だ。ある意味アートの授業だと言える。こんな話がある。。。
その先生は、生徒をハドソン川に連れて行き、対岸を指差した。「向こうにどんな色が見えているかな?」。生徒たちは口々に言った。レンガの家が赤くて、塔が白いとか、オレンジのビルがあるとか。そこで先生は、真ん中に穴を開けたカードを配った。これを目の前にかざして、穴から対岸を見るように指示して尋ねた。「さあ、今度はどんな色が見えるかな?」
生徒たちはみんな、黙り込んでしまった。しかし、しばらくして誰かが言った。「青が見える。対岸のものは全部、青色だよ・・・」
まず、すべてが青く見えた理由を説明しよう。もやのかかった日に見えるものは、見ている対象の色じゃない。自分と対象物の間にある大気の色が見えるんだ。この大気には、多くの場合反射が映り込んでいて、この場合は川の水と空の色だろう、それが大気に映し出されているから、すべては青く見える。だから、遠くに見える山が紫色だったり、青かったりするわけだ。
印象派の画家たちは、対象物の色を描いたのではなく、見ている人と見る対象の間の空気を描いたんだ。ある時期のアートに生まれた、印象派画家たちの偉大なイノベーションのひとつだ。
この本は問う。「生徒たちが、自分の見ている色が赤、白、オレンジだと思っていたのはどうしてだろうか?」「色という概念を、観察と取り違えてしまうからだ」。つまり、レンガの建物は赤いはずだ、と。だから、カードを使って、対象から色だけを切り離して見たとき、対象を見えなくして純粋に色だけを見ると、青色が見えた。「アートを学ぶ学生は、見る方法を学ばなければならない。なぜなら、彼らには見えないからだ」と、この本は言う。そして、これは誰にでも当てはまる。
現実を見るときに、比較思考のプロセスがあると、現実の多くの部分を見過ごしてしまう。自分のデータベースにあることと合致しない現実を見過ごしてしまうんだ。あなたの思考は、物事を整理整頓したがっていて、「知らない」ことを嫌う。だから、私たちは推測するし、だから、私たちが本当は何も知らないものについての理論が、星の数ほど存在している。私たちが「知らない」ことを嫌うからだよ。答えをでっち上げるんだ。しかし、概念というのはとても強い力を持っていて、それが現実だと思わせてしまう、もはや見るまでもないと思わせてしまう。
構造思考を教えるときに私たちがすることのひとつは、あなたが「自分はこんなことに気づくはずだ」という先入観のない現実をもっとよく見る方法を伝えることだ。そうすれば、いろいろなことに気づくことができる。ビジュアル言語に翻訳することで、あなたが持っているかもしれないバイアスを取り除いてくれる。だから、ステップ1「ゼロから始める」ことが簡単になる。