アクション・インクワイアリーを学ぶ(5)-7つの行動論理<アルケミスト型>-

※本記事は、チェンジ・エージェント社のウェブサイト「アクション・インクワイアリー特集(1)~(5)」より、当社の許可を得て、を転載しております。


「アルケミスト型」の行動論理とは

皆さん、パウロ・コエーリョの『アルケミスト』という小説をご存知でしょうか。「アルケミスト型」を理解するにあたって、この小説のワンシーンをとりあげてみたいと思います。

ビル・トルバート氏が「アルケミスト型」についての理解を促すとき、理論よりもストーリーを多く用います。それは、わたしたちが、言語や論理上の解釈でなく、より想像力や感覚の力をつかってアルケミスト型の芸術的な生き方/はたらきかけ方を掴みとれるようにするためです。ビルの著書『行動探究』の最終パートでは、6名のアルケミスト型の人たちのストーリーをお読みいただけます。本記事では、小説『アルケミスト』の中のストーリーを用いることで、この行動論理の特徴についてのご紹介を試みてみます。

ストーリーの紹介~小説『アルケミスト』(パウロ・コエーリョ著)より~

主人公の少年は、旅をしながらたくさんの人に出逢います。

ある日、少年は、「幸福の秘訣」を学ぶために、世界で最も賢い男に会いにいきます。そこで賢者は、忙しくて話ができないので、賢者の住む宮殿の庭を二時間でまわってくるよう伝えます。その際、少年に二滴の油が入ったスプーンを渡し、宮殿をまわる間絶対にこぼさないようにと忠告しました。

帰ってくると賢者は、

  「さて、わしの食堂の壁に掛けてあったペルシャ製のつづれにしきを見たかね。庭師の頭が十年かけて作った庭園を見たかね。わしの図書館にあった美しい羊皮紙に気がついたかね?

と少年にききます。

スプーンの油ばかりを見ていて全く庭の素晴らしさに気づかなかった少年に、賢者はもう一度宮殿をまわってくるように言います。美しい風景や美術作品に触れ、大はしゃぎで帰ってきた少年に賢者は、今度はスプーンの油がどうなったかを尋ねます。少年が持っていたスプーンを見ると、油はどこかへ消えて無くなっていました。

そこで、賢者は言います。

  「では、たった一つだけ教えてあげよう

  「幸福の秘密とは、世界の全ての素晴らしさを味わい、しかもスプーンの油のことを忘れないことだよ

一瞬いっしゅんを大切に生きる道としてのアクション・インクワイアリー

アクション・インクワイアリーとは、「複数のことを同時に行う」ことだと、ビルは繰り返し言います。このことに最も熟練した状態を、アルケミスト型と名付けています。これまでに「4つの体験領域」の紹介をしましたが、それは、いま・この瞬間においてこの4つのどの領域にも意識を持っていけることを練習するためにつくられたフレームです。また、「主観・相互主観・客観」の三者の視点を常にもってその場の真実を探求すること、「個人の統合、二者間の相互性、組織の持続性」の3つのスケールにおける発展、成熟を目指すこともそうです。

こうして見ると、そんなに多くのことを一度に本当にできるのだろうか?と、不安になったり、疑いたくなってしまったりするかもしれません。でも、「私たちは多かれ少なかれ、それをやっている」のです。どのレベルでやっているかは、人それぞれ、または時にもよるかもしれませんが、ひとつの瞬間にひとつのことしか意識していないことの方が稀です。大切なのは、この意識の範囲を少しずつ広げ、より大局的に見ることができながらも、同時にその場の当事者として自らの行動をもってコミットをしていく、という行動探究を意図して練習をしていくことだといいます。長い学習の道のりです。日々、一瞬いっしゅん、日常のあらゆる場面を丁寧に生きたい、言葉を丁寧に紡ぎたい、行動に真の影響力をもたせたい、そんな願いをもつどんなひとにも開かれた道です。


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